杉山勝彦講演会@早稲田大学

 坂道シリーズを語る上で欠かせない天才作曲家・杉山勝彦さん。何曲もの名曲を次から次へと生み出す秘訣を知るために、早稲田大学で行われた講演会へ行ってきた。そこで披露された、数多くの「成功の秘訣」をシェアしたい。

 

 杉山さんは、生粋の陽キャラだ。アイドルを推す層とは似ても似つかない部分がある。名門一家の三男として生まれ、周囲の反対を振り切って音楽の道に進み、現にいま大活躍をしている。プロットがすごい。THEお坊ちゃん。

 杉山さんの音楽のルーツは、小さい時に聴いていたクラシックだという。曰くお母さんがピアノの先生だそうだ。音楽のある家庭で育ってきた。杉山さん自身はピアノを始めてスグ辞めてしまったという。意外。その後高校生でギターの魅力にとりつかれ、ひたすら練習していたという。大学を卒業した後にピアノを再開し、今はキーボードメインで作曲しているという。

 乃木坂なりの新曲を聴いていると、「あれこの曲…?」となって、やっぱり作曲・杉山勝彦となることが多い。杉山勝彦らしさ、というのがどこかにあり、客もそれを好んで聴いている。杉山勝彦らしさ、つまり美しく流麗で、構成がはっきりしている音楽。その原点はクラシックにあったということなのか。

 

 家庭もすごいがそれだけの力じゃない。やっぱり、育ちがいい人はスレていないからか、純粋に自分のやりたいものを追求できるのだろうか。はたまた、彼自身の特徴なのか。

 ギターと出会った高校生の杉山さんは、初めて曲を書いて文化祭で披露をし、大成功を収めた。なんと、MDに焼いてほしいというお願いが殺到したそうだ。本人も当時を振りかえって、今聴いてもいい作曲だとおっしゃっていた。無意識のうちに転調を忍ばせていたようだ。作曲にセンスがあった。

 音楽に魅せられて、次に起こした行動は大学への進学であった。当時から音楽の道で食べていこうと決意していた杉山さんは、当時好きだった女の子の誘いもあり、早稲田大学に入って名門サークルに入ることを決意した。その名門サークルこそ、かのゴスペラーズを輩出した「Street Corner Symphony」であった。大学合格に狙いを定めた杉山さんは、必死の努力をして見事早稲田大学への合格を勝ち取った。一方、好きだった女の子は不運な結果に終わってしまった。

 

 「集中」こそが成功の秘訣である。

 音楽でプロになるという明確な目標があった。大学生だったある日、渋谷で飲んでいたところ、NHKの音楽プロデューサーに声をかけられた。その場で披露した余興の音楽を評価されたのだという。「作曲できる?」と聞かれた杉山さんは、当時勉強中だったものの、そういってしまえば話が終わると考え、できると言い切った。その足で録音機を買い、説明書を見ながら曲を作った。その曲がNHKの番組で10秒間流された。

 24歳の時、ゴスペラーズをスカウトした佐藤善雄さんに認められ、SONY所属の作家になった。それからは、書いて書いて書きまくった。三か月間くらい2時間睡眠で働き続けたという。人間の体はすごく、2時間睡眠にも適応できたという。さすがに身体も限界となったころに嵐の曲「冬を抱きしめて」が採用されたという。

 その後はヒット曲を連発した。すごい作曲家になった。そんな今でも、ひたすら働くという生活を送っている。9時に起きて、27時まで働く。スタジオに寝泊まりしているから朝起きて0秒で仕事を始められる。飲み会から帰ってきても、何かしら仕事をしてから寝るという。

 すごい。すごすぎる。集中すること、そしてその集中を長い期間にわたって継続させられることがすごい。これまで20年生きてきてそういう経験が一度もない。夢中になれるものを見つけたい。そして、今でもストイックな生活をしているのがすごい。曰く、大学受験の時のテンションを今の今まで継続させているらしい。なんてエネルギッシュなんだ。。

 

 また、それに関連していくつかの「秘訣」を教えてくださった。

 まずは、「投資」。自分が好きだと思ったものにはとことん投資をする。音楽の道で生きると決意した学生時代、30万の大金をはたいて良いギターを買った。それを今でも現役で使っている。「値段ではなく価値を買う」。お金をかけるべき場所には、遠慮なく投資をする。

 次に、「どうやって好きなことを見つけるか」。大前研一の言葉を引いて、①時間配分②住む場所③付き合う人、これらを変えることが大事だと仰った。これは凄く響いた。両親や地元といったしがらみを抜けて、違う場所で違う人と違う生活をすること、確かにこれをすれば新しい何かが見える気がする。また、「決意を新たにすること」は非生産的だとバッサリ斬られた。思い当たる節、大いにあり!

 

 大学を卒業して三年間、株の運用をしたりサラリーマンをしたりしていたらしい。そこで稼いだお金を音楽活動の資金として、各種機材をそろえたそうだ。やっぱり株だ!そして、この部分でも「集中」が役立ったという。

 

 講演の一部だが、まとめさせていただいた。読めば分かるように、とにかくエネルギッシュな人だった。何かに「感動」しながら生きている。現世を心の底から肯定しながら生きている。いや、心の中には複雑な感情があるのだろう。でも、音楽という一本の軸、人生の軸を持っていることは凄く幸せに見えた。

 これを聞いて、次に自分がどう行動するかが大事だ。自分はいま何がしたいのか?毎日を無為に過ごしている。このもやもやを「モラトリアム」といって自分で慰めている。20年生きてきて、何も成し遂げていない。

 だから明日から頑張るぞ!!!…ではいけなくて、何かしら行動を起こさなければならない。何事も行動なんだろうと思った。杉山さんがNHKの人に声をかけられたのだって、早稲田祭で佐藤さんから認められたのだって、結局は自分が「こういうことできます」「こういうことしたいです」という思いを表現したからだ。いまの自分は何もない。ただ美味しいご飯と綺麗なものがあればいいという生活だ。

 とにかくお金を稼いで、実家から抜け出すことだ。