欅坂が好きな理由

高校生の時、欅坂46にハマりました。欅坂も僕も全盛期だった2017年には、2か月で7公演、富士急にはじまり、名古屋・新潟・幕張と、ほとんど同じセトリだったにもかかわらず、友だちと観に行っていました。

 

欅坂のイメージというと、平手ばかり目立っている、変なダンスをするグループだと思います。そのイメージはほぼ合っていると思います。

 

欅坂は、平手を主演とした長いリアル演劇です(でした)。加入から卒業まで、14歳から17歳までの3年間にわたって、演じ続けられた演劇です。演劇の主題は「他者と理解し合えない淋しさ・孤独」「人生の意味」でした。夏目漱石の『こころ』やサリンジャーの『ライ麦畑』的、思春期に陥りがちな、普遍的で未解決の哲学的主題をもとにした演劇です。14歳で欅坂に入った平手友梨奈が、他者と分かり合えない孤独に気づき、悩み、もがき、そしてある一定の答えを得るまでの様子・思想の成熟を、卒業まで3年にもわたる活動の中で、表現してきたものです。日常で漠然とした悩みや疑問を抱える同い年くらいの少年少女が、欅坂の発したメッセージに共鳴して、熱狂的なファンになったように感じます。

 

〇 第一章 レジスタンスの始まり

欅坂・平手の主たる悩みは、生きる目的を見つけられないということでした。何をしても楽しくない、その中でも将来の選択をしなければならない。未来が見えないこと、やりたいことが見つからないことに、絶望を感じていました。

そして、近くにいて本来手を差し伸べてくれるはずの存在である親や先生などの「大人たち」が、自分の境遇・思いを理解してくれないことに怒りを覚えました。かつて大人にも思春期があり、同じような不安を抱えていたはずなのに、なぜ理解してくれないのかという疑問を感じていました。

そのような背景で生まれたのが『サイレントマジョリティ』でした。この曲は、自分の感情に素直に生きていこうという、同世代へのメッセージでした。この曲は大したことを言っていませんが、平成の尾崎豊のような、少年少女の大人・社会へのレジスタンスの曲として、多くのファンを集める曲になりました。当時の平手の苦悩は『AM1:27』や『大人は信じてくれない』という曲で端的に表現されているので、ぜひ聴いてみてください。

 

〇 第二章 敵は大人ではなく、こんな近くにいた

サイレントマジョリティ』では、かつて少年少女だった大人たちに、昔の気持ちを思い出してもらえれば、自分たちの苦しみを理解してもらえると考えられていましたが、徐々に諸悪の根源が、大人だけではないことに気づきました。それは、周囲の少年少女たち、いわゆる「同調圧力」というものでした。

例えば、自分は試験勉強したいのに、友だちにカラオケに誘われて断れば、ノリの悪い奴としてハブられてしまいます。自分は小説家として頑張りたいのに、クラスメイトはわざわざネットで作品を探してきては、イジりの種にします。やる気のあるやつをバカにする、出る杭は打たれる。そうして、本当に自分のやりたいことを行うのが難しくなっていきます。

そこで、次に平手が送ったメッセージというのが『エキセントリック』や『不協和音』という曲でした。大人も友達も、本当の自分を理解してくれない。理解しようともしてくれない。それどころか、攻撃してくる。それでも、自分は自分で在り続けるために、誰になんと言われようと自分のやりたいことをやるべきなのだというメッセージでした。

 

この頃から徐々に平手は先鋭化し、熱量や方向性の違いからグループ内でも一人浮くようになっていきました。そしてそれは同時に、楽曲のメッセージ、「仲間に嫌われても、自分のやりたいことをやれ」の体現でもありました。結果として、紅白のぶっ倒れ事件のような、常人には理解しがたい、それでいて何かエネルギーを感じさせるパフォーマンスが生まれました。もはやあれはシャーマニズムでした。何かの降霊儀式のようなものでした。

 

〇第三章 成長と和解

紅白の事件後、平手は休養としてグループ活動を休止します。その間はアメリカ留学などをしていたようです。その頃になると、平手自身も、精神的に成長し、周りを見る余裕ができていました。それは同時に、かつてあれほど憎んでいた「大人」に変化していくことでもありました。

かつてあれほど悩み、憎んでいた少年少女も、時の流れと共に、その怒りを忘れていきます。現世を肯定的にみられるようになります。

「大人も友達もだれも理解してくれないなら、一生独りで生きてやる」と少し前までは思っていた平手でしたが、今やかつてのエネルギーを失いました。周りは相変らず理解してくれないけど、だからといって一人で生きていくのも寂しいと思うようになりました。その微妙な感情のゆらぎを表現した曲が『アンビバレント』です。

 

○終章 卒業

結局、思春期の孤独や悩みというのは、時間の経過によって、答えはあいまいなまま、その切実さを失っていくものだということが分かりました。もはや、平手が欅坂のメンバーとして、同じ境遇の人に送るべきメッセージはなくなってしまいました。かつて欅坂に熱狂していた少年少女のファンたちも、同じようにその悩みが薄れ、徐々に欅坂から離れていきました。2019年9月の東京ドーム公演を最後に、平手は欅坂を卒業しました。

 

〇参考

以上に挙げた曲だけでも聴いていただけると、欅坂をだいたいつかめると思います。特に、不協和音のパフォーマンス映像は垂涎モノです。

ビリビリ動画を探すといい動画が出てきます。

https://www.bilibili.com/video/BV1M7411z7HS?p=1